エピソード11
冬と落書き
komejirushi
この冬は雪がないので「こわいような気がするね。」なんて
お決まりの話をお客さまとしたりして
本当なら白い帽子をかぶっているはずの山々も
遠くの方まで頂上の様子を見ることができるほど。
「こんな年は山に水がなくてこまるだろう。」
「きっと楽なかわりに何かが起こるよ。」
何だか疑心暗鬼な心持ちが人の中に蔓延しているようで
森にある狂い咲きの椿を眺めてはどきどきしたまま
家に帰ると子供たちが帰ってきて
1歳の次女を抱っこすると
手のひらいっぱいに色とりどりの油性ペン。服の袖までも。
「もーちゃんが油性ペンのフタあけたけー。ごめん。」と長女。
次女はにこにこ満面の笑顔。
そんなささいなこと。でも、何だか心が晴れた心地がした。