エピソード11
森の風景
komejirushi
芽吹きたての葉が生い茂る青々とした森の入り口に
1輪だけ鮮やかなピンク色の椿が咲いていた。
位置も色合いも完成されすぎていて思わず見惚れる。
その椿が咲いている枝は
冬の間中降り続く雪の中にずっと埋もれていて
もう折れてしまったかと思うほどしなだれていた。
今年は重い雪のせいかその椿の木も弱り
咲かせたのはその1輪だけ。
しかも一番にしなだれていた枝の先。
その木に感情はない。
けれども計り知れない自然の力とメッセージを感じる。
どんなに厳しい環境下でも耐え続け、
たった1輪人の目を奪うほどの美しさで咲いた。
これだから、自然とともに生きたいと思う。
長い冬を越え、声が聞こえそうなほどの勢いで芽吹く木々たち。
そんな変化は四季折々、季節ごとに起こる
ありふれた自然の出来事。
けれどもどんな映画を見るよりも、どんな小説を読むよりも
ドラマチックに思えてならない。