ドライブと偶然
次女が産まれ毎日がジェットコースターのように過ぎていく毎日。
それでも私にとってこめじるしという空間は
お菓子づくりで頭をきりかえられたり
お客様とお話させていただいたり
ますます大切な場になっていると感じる。
先日実家に帰省した際のこと、
家でゆっくり過ごしていると長女がどうしても出かけたいと言う。
お昼寝の時間でもあったので眠たさもあるのかなと
車に乗せて少しドライブすることにした。
しばらくするとやはり彼女はうとうとし始め
もうしばらく車を走らせよう、どこに行こうかという話しに。
「昨日、店構えの気になるお店がこのあたりにあった。」と主人。
「そういえば、お店のお客さんで素敵なお店がこのあたりにあると教えてくれた。」と私。
調べてみるとそのお店は同じ店で、そこから数分ほどの距離にあることが分かった。
眠りかけていた長女もお店に着くと目を覚まし
店内の可愛らしいマスキングテープたちに目を輝かせていた。
店主さんとお話させていただくと、ご実家が島根県にあるとのこと。
今度ぜひ寄りますね、と新しいご縁ができた。
子供たちのこと、お店のこと、考え出すときりがない中で
想像の域を超えて何か新しい道がふっと見えることがある。
思えばこめじるしというお店は、そんな偶然に恵まれて存在している気がする。
今目の前にある大切を、大切に。肩の力を抜いて過ごすことも
新たな道しるべになるのではないかと娘に教えられた気がした。
三寒四温
昔の人は自然とよく向き合っていたのだろう。
タイトルのような言葉の感性を持って過ごしていたい。
季節だけではなく、日々向き合ういろいろのことを
すぐに結果を求めるのではなくて
だんだんと、それでもゆっくりと前へ進むのだと
どっしりと構えていられたらいいなと。
今年は積雪がなく暖かい冬となった。
季節の歩幅が乱れてしまっていないかと少し不安になる。
自然が変わらぬ自然であるように願うばかり。
密かな目標
私たちの好きな小さなガソリンスタンドがある。
ご家族なのかどの方も、いつも変わらぬ丁寧な接客。
窓の細かい汚れまできちんと拭いてくれ
挨拶から送り出しまでサービスが徹底している。
そのガソリンスタンドに行くたびに清々しい気持ちになる。
目の前にあることを、毎日変わらず丁寧に。
それはお店でも、日々の暮らしでも、目指したいところ。
今の時代、人と違うことや目立つことは評価されやすいけれど、
淡々と変わらず一つのことを続けることは見えにくい。
けれども私にとっては、後者の方が価値があるように思えてならない。
森と記憶
3歳の娘をおんぶして森を散歩していたら
のどの奥がツンとして涙が出そうになった。
落ち葉の絨毯の下には真緑の雑草たちが顔をのぞかせていて
まだこれからが冬本番というのに
先の春を見据えて力強く生きている。
季節は容赦なくめぐり、人間を待ってはくれない。
背中では寝はじめた娘が暖かく重みを増して
吹く風が一層冷たく感じる。
おんぶして後ろで寝息をたてるこの時もきっと一瞬で
いつかこの森でのことを懐かしく歩く時が来るのだろう。
森の匂いも、風の冷たさも、全てが記憶となり
いつか思いをはせる思い出。
今を大切に。一瞬一瞬大きくなる娘たちをしっかりと見つめたい。
憧れる人たち
こめじるしに立っていることでうれしいことは
素敵な年の重ね方をされる人たちに出会えること。
共通の趣味を持って刺激的な毎日を過ごされているご夫婦。
お店でコーヒーを飲みながら笑い合っているご夫婦。
多趣味でいろいろなことを教えてくださるおばあさま。
いつも笑顔で知らないことをたくさん教えてくださるお父さん。
きっとこれまでたくさんのことを経験されてきて
楽しいことも辛いことも見てきておられるはずだけれど
苦労話ではなくて今を楽しんでおられるお話ばかり。
がんばって、といつも応援してくれる。
辛いことや悲しいことは誰しもが経験することだけれど
いくつになっても年を重ねても、人に優しくありたい。
お店で出会うそんな方々が私にとっての一番の憧れ。
真夜中の蛍
夜、家のまわりを1周歩くとよく眠れるからと
毎日の夜中の散歩を欠かさない92歳のおじいちゃん。
先日、朝起きた2歳の娘に
「蛍をつまかえたんじゃが袋から出てしもうたー」と寂しそうに話しかけてきた。
聞けば夜の散歩中に、娘のために蛍をつかまえて袋に入れたのだが
穴が開いていたらしくそこから逃げてしまったらしい。
「まだそのへんにおるかもしれんでー」と言うが見当たらない。
その前に、めっぽう最近弱ったと言うそのおぼつかない足で
よくぞ暗闇の中飛び回る蛍をつかまえたものだと思った。
その様子を想像すると思わず笑いが出そうになる。
蛍を追いかけてあちこち追いかけ回っただろう。それも真夜中に。
そこには、愛しかない。ひ孫への。
そんなひいじいちゃんと一緒に暮らせる娘は、間違いなく幸せである。
森の風景
芽吹きたての葉が生い茂る青々とした森の入り口に
1輪だけ鮮やかなピンク色の椿が咲いていた。
位置も色合いも完成されすぎていて思わず見惚れる。
その椿が咲いている枝は
冬の間中降り続く雪の中にずっと埋もれていて
もう折れてしまったかと思うほどしなだれていた。
今年は重い雪のせいかその椿の木も弱り
咲かせたのはその1輪だけ。
しかも一番にしなだれていた枝の先。
その木に感情はない。
けれども計り知れない自然の力とメッセージを感じる。
どんなに厳しい環境下でも耐え続け、
たった1輪人の目を奪うほどの美しさで咲いた。
これだから、自然とともに生きたいと思う。
長い冬を越え、声が聞こえそうなほどの勢いで芽吹く木々たち。
そんな変化は四季折々、季節ごとに起こる
ありふれた自然の出来事。
けれどもどんな映画を見るよりも、どんな小説を読むよりも
ドラマチックに思えてならない。