エピソード11
おいしさと記憶
komejirushi
次女が3歳の誕生日を迎えた。
たまたま帰省と誕生日が重なったこともあり
母が孫のためにバースデーケーキを作ってくれた。
うまくふくらまなくて2回焼いたスポンジが重ねられ
かすかに記憶に残る昔私に作ってくれたケーキと同じように
スライスされたバナナが挟まれていて
生クリームが丁寧に塗られ何人分かという大きな大きなケーキに仕上がっていた。
「おいしいとは何だろう。」このところ考え続けている問いに
母のケーキは優しく答えをくれたような気がした。
ひとつひとつのお料理やお菓子には
そこに費やされた時間も、思いも目には見えない。
けれどそれは確実に記憶となってそこに宿り
受け取る人にぬくもりとなって伝わる。
それを何と言葉にして現そうか。
そのひとつの言葉はきっと「おいしい」だと思う。
心からの「ごちそうさまに」と一緒に。