エピソード11
物と記憶
komejirushi
私は小さい頃から父の本棚から本を抜き取っては
読んで見ることが好きだった。
それがいつしか習慣となり
大人になっても本が好きである。
ふと今の時代、本自体が売れなくなり
パソコンや様々なツールを使って本を読むことができる世の中で
家に本が残って行かないことの重大さに気づいた。
私は小さい頃から自分で選ぶことなく
そこにある本を自然と読むようになり
「読みなさい」と言われたことは一度もない。
しかしながら結婚して家を離れてからも
たまに帰省して父の本棚にある本を読むのが好きだ。
物としてそこに残ることは、受け継ぐことなのだと思う。
私たちが本からいただいた物を
強制力なく優しく人に伝えることだ。
物はなくても、内容を知ることのできる時代。
どこにも行かずしてそれをいつでも得ることができることは
とても便利でいいことだと思う。
しかしながら私はあえて物として本を残すことで
受け継ぐことに希望を注ぎたいと
そんなことを思う今日この頃。