エピソード11
カマキリとお墓
komejirushi
閉店後、いそいそと家に帰る支度をしていると
駐車場で生き絶えてしまったカマキリがいるのを見つけて
「おかはを(お墓を)作らんといけん。おかはを。」と3歳の長女。
木の枝を2本拾ってきて、箸のようにカマキリを挟んで
車が踏みそうにない場所を見つけ穴を掘る。
中にそれを埋めてあげたあとは、お花をつんできて
「1本じゃ寂しいじゃろ。もう1本いる。」とまた探しに行き
つんできたお花を丁寧に埋めた場所に植えた。
その様子を眺めながら、私は先を急ぐことをやめた。
彼女にはその時、お墓を作ることが何よりやらなければいけないことで
私が帰って夕飯を作ることよりも、家事をすることよりも
大切なことのような気がした。
次の日お店に行くと、駐車場の端にお墓のそばに植えられた
昨日のお花たちがそよいでいた。
それを見た時、しばらく見つめていたいような
何ともあたたかな気持ちになった。