エピソード11
森と記憶
komejirushi
3歳の娘をおんぶして森を散歩していたら
のどの奥がツンとして涙が出そうになった。
落ち葉の絨毯の下には真緑の雑草たちが顔をのぞかせていて
まだこれからが冬本番というのに
先の春を見据えて力強く生きている。
季節は容赦なくめぐり、人間を待ってはくれない。
背中では寝はじめた娘が暖かく重みを増して
吹く風が一層冷たく感じる。
おんぶして後ろで寝息をたてるこの時もきっと一瞬で
いつかこの森でのことを懐かしく歩く時が来るのだろう。
森の匂いも、風の冷たさも、全てが記憶となり
いつか思いをはせる思い出。
今を大切に。一瞬一瞬大きくなる娘たちをしっかりと見つめたい。