エピソード11
真夜中の蛍
komejirushi
夜、家のまわりを1周歩くとよく眠れるからと
毎日の夜中の散歩を欠かさない92歳のおじいちゃん。
先日、朝起きた2歳の娘に
「蛍をつまかえたんじゃが袋から出てしもうたー」と寂しそうに話しかけてきた。
聞けば夜の散歩中に、娘のために蛍をつかまえて袋に入れたのだが
穴が開いていたらしくそこから逃げてしまったらしい。
「まだそのへんにおるかもしれんでー」と言うが見当たらない。
その前に、めっぽう最近弱ったと言うそのおぼつかない足で
よくぞ暗闇の中飛び回る蛍をつかまえたものだと思った。
その様子を想像すると思わず笑いが出そうになる。
蛍を追いかけてあちこち追いかけ回っただろう。それも真夜中に。
そこには、愛しかない。ひ孫への。
そんなひいじいちゃんと一緒に暮らせる娘は、間違いなく幸せである。